読書感想文


陋巷に在り 9 眩の巻
酒見賢一著
新潮社
1998年8月20日第1刷
定価1500円

 「陋巷に在り8冥の巻」の続刊。
 冥界に行き娘を助けた顔回はなんとか人間界に戻ってくる。ここで回は必要に迫られ、仇敵の子蓉と一体にならなければ人間界に帰れないということで扶養の心にわけいり彼女を結果的に破ることになる。ということで、この巻で、長きに渡った子蓉との戦いが一段落した。術を尽くす子蓉は術に対して人間性そのもので受け止める顔回にかなわなかったということである。
 一方、孔子は政策を進めるにあたって、それを命を張って立ちふさがる無私の人、處父に対して土地神を使って謀殺しようとするが、冥界で力を得て戻ってきた顔回はそうと知らずに處父を助ける。これがどうやら孔子の失脚につながっていくようだが、それは先の話。
 この巻で顔回が常ならぬ力を得たことによりいよいよ孔子の運命が変わることになる転回の序章といえる。
 一歩一歩にじり歩くように話が進んでいくこの大河長篇であるが、顔回が娘を救ったことにより、ひとつの大きな山を越えたという感じがする。處父というあなどれない人物も登場し、話が大きく動き始めた。
 さあ、これからだな。

(1998年8月27日読了)


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