「星間興亡史III」の続刊。
ガイアードの奸計で勢力図が大きく変わった太陽系。独立自由艦隊はガイアードの進出を阻止し自分たちが生き残っていくために、奇策ともいえる賭けをする。地球連合、ガイアード、太陽帝国の三方面に同時に打って出るのだ。ガイアードへは皇帝凛斗の母の奪還のために。人質を取り返さなければ相手ができない。地球連合にはホストコンピュータ、GMへウイルスを侵入させるという難しい作戦。この作戦はGMを独立自由艦隊に好意的になるようにするのだ。成功か、死か。作戦に参加する登場人物たちはそれぞれに別れをの辛さを味わいながらも作戦成功に向けて敵地におもむくのである。その心情などはていねいに描写されていて本書がただ戦略戦術だけの小説ではなく物語を紡いでいるのだということを認識させてくれる。
宇宙戦記ものとしては、本巻で「銀河英雄伝説」を越えたのではないかと、私は思っている。戦略戦術面では架空戦記でつちかわれた方法論を用い、政治的な違いだけでなく文化的背景も視野にいれて国家を構築し、人物たちは類型的ではなく経験を踏むことによって成長、後退をくり返す。
「銀英伝」が物足りなかった人には特にお薦め。もっと話題になってもいいシリーズである。続刊以降も十分に期待ができる。
(1998年10月3日読了)