「大久保町の決闘」と舞台も登場人物も全く違う。自分の住んでいる町を使って全然違う設定の話を書きシリーズと称してしまうのだからすごい。シリーズものの常識を越えている。
本書での大久保町はナチス占領下にある。このナチスはなぜか「イノウエ・ナチス」とよばれている。なんでナチスが大久保町を足場に世界支配を狙わなければならないのか。それは、作者がそこに住んでいるからである。
ストーリーは、その大久保町にまぎれこんだ青年が何がなんだかわからないままにレジスタンス組織と行動をともにしてナチスの方位網を突破して脱出しようとするというわかりやすいものだ。その展開の間というのが、落語なんですな。前作は舞台コメディで今回は落語だ。
だから、ストーリーの本筋よりもマクラ、クスグリ、つまり話にはいるところの前振りや途中のギャグ、脱線が面白い。ストーリーとなんの関係もないことをえんえんと説明しておいてスッと本筋に戻る間が絶妙。
いや、ストーリーもちゃんと笑えるものにはなっているんですよ。でも、それ以上に語り口で笑わせてくれるということです。
(1998年10月25日読了)