「月光真珠」に続くシリーズ第3巻。
平安京に「処女の産む神の子」による救済を信じ、数珠を手に救世主の出現を願う人々が続出。おりしも物の怪にとり憑かれた女御、処女ながら子を宿した尼の話などが義明の耳に届いてくる。尼の腹に宿る子どもは本当に救世主なのか。貴族たちの勢力争いや、敗れ去った貴族の怨念など様々な要素がからみ合い、事件の謎は深まっていく。
姫宮は前巻で受けた負傷から完全に回復しておらず、怨霊や物の怪を倒すのには万全ではない。
前巻の設定を生かしながら本書だけでも面白く読める。ばらばらに出てくる鍵が最後になってひとつにまとまっていくという、小説の本道をちゃんとおさえている。キャラクターに少しずつ奥行きが出てきているのはシリーズの強みだろう。もっとも、それができてないシリーズというのは実はかなりあるのですがね。
帝の子をなさなければ価値がないとい宮中の女御たちの哀しさなど、女性らしい視点が物語に深みを与えている。
新刊が楽しみなシリーズのひとつになってきた。
(1998年11月8日読了)