大正時代末期を舞台に、青年探偵小暮十三郎と助手の渡、そしてマネージャーの礼乃が、帝都を揺さぶる謎また謎に挑む新シリーズの開幕。
本書は、戦争で愛息を失った名医が、フランケンシュタイン博士の日記を入手し、人造人間を作る実験を開始。首だけ残した息子を蘇生させようとする。それに目をつけた憲兵隊長横光大尉は不死の部隊を作り軍に君臨しようとしている。人造生命をめぐって十三郎の活躍が始まるのだ。
ストーリーとしてはスタンダードで見せ場もそれなりにある。なのに、思ったほどワクワクしないのはなぜだ。つまり、スタンダードすぎるのである。先が読めてしまうのだ。
作者が本格的なデビューを飾った「魔大陸の鷹」のシリーズと同様、キャラクターにおぶさりすぎてはいないだろうか。そのキャラクターも、今回はかなり借り物くさく感じる。作者の書きたい作品がどんなものだかはよくわかるのだ。しかし、残念ながら独創性が薄いと言わざるを得ない。
もっとも、これは私がすれっからしだからそう思うのであって、若い読者には新鮮にうつるかもしれないが。
(1998年11月23日読了)