「悪魔の国からこっちに丁稚 上」の完結編。
本書は悪魔の丁稚、ズドムが隣国に援軍を呼びに行き、食人部族を倒し、無事に丁稚奉公を終えて……、という展開。食人部族の描写や遊牧民族の描写など、なんだか民族差別くさいが訳者のギャグ連発翻案のおかげで、完全にカリカチュアライズされていて救われているように思う。
姿形は恐ろしいが心優しい悪魔の話(たぶん)が、わけのわからんやつがわけのわからん国へすっとばされてアホなことばかりするという話になってしまったわけであるが、原文と比較したわけでも完訳を読んだわけでもないけれど、きっとこちらの方が完訳より笑えるだろうし、あらすじから考えてもこのような新喜劇的展開でなければ私はきっと読まなかったと思うぞ。
やはりここは翻案の常道として、「原作・ディ・キャンプ/文・田中哲弥」と標記してもいいのではないだろうか。
ところで、「悪魔の丁稚」というのは落語「茶漬えんま」(小佐田定雄・作)とよく似た感覚であるなあ。桂枝雀師匠の「笑いは緊張の緩和」論に合致した正統派の喜劇小説なのである。ほんまか。
(1998年12月12日読了)