「覇者の戦塵1942 激突シベリア戦線 上」に続くシリーズ15冊目。
上巻でソ連基地の供与を受けた米軍機に日本海沿岸を攻撃された日本軍だが、この下巻では防衛のためにソ連基地に侵攻することになる。関東軍を中心としてソ連軍と本格的な陸戦を開始するのだ。ソ連基地を叩いて、日ソ中立条約を結ぶという作戦なのだが、その成否はいかに、というところ。
ロケット砲の技術面から改良を加えて実戦に投入する苦心を描いた前半と、実際に戦闘に投入する後半という構成で、ソ連軍との死闘が展開される。ここで語られるのはどれほど優れた技術でも使うのはやはり人間であるということ。そのために起こる、極めて人間くさい戦闘なのである。優秀な指揮官が健在なうちは一糸乱れぬ攻撃をしていたソ連軍の戦車隊が、その指揮官の戦車がやられたとたんに烏合の衆と化す様子、ロケット砲を持ちながら使いこなすのに苦労し苦戦する戦闘機など、当たり前のことを当たり前に述べながら、リアリティとドラマ性を与えていく。
絶版になっていたカドカワノベルズ版のシリーズ前半もC・NOVELSで再刊されるという。優れたシリーズがこうやって生き残っていくことは喜ばしいことである。
(1998年12月14日読了)