「姫神さまに願いを〜享楽の宴〜」に続くシリーズ第3弾。
本巻では、カイとテンは下関へ。源氏の血をひく足利将軍家の血筋であるカイは、平家の落人たちの亡霊に悩まされる。身を寄せた寺には謎の官僧、菊武が。そして、寺に祀られてあるのは、はるか昔、壇ノ浦に没した草薙の剣の鞘。明らかにされた菊武の正体とは……。
平家伝説を巧みに織り込み、悲劇の幼帝に新しい物語を与えた意欲作。アイデア、ストーリーとも非常にしっかりしていて好感が持てる。
カイとテンは単なる狂言回しにとどまらず、エピソードとうまくからめながら彼らの物語をも進行させている。そのあたりも評価したい。
言葉遣いが現代の高校生みたいだったりノリが非常に軽かったりしているので、受けつけにくい人もいるだろうが、骨格は本格的な時代伝奇小説なのである。前巻と同じく、もう少し密度を濃くしたら読みごたえのある中編になるのにとも思う。
でも、作者はたぶんそんなつもりではないだろう。作者が若い分、読者と同じノリで楽しんでいるという感じだから、それはそういうものとして読むべきなのだろうね。
(1999年1月7日読了)