読書感想文


魔界都市ブルース6(童夢の章)
魔界都市ブルース
菊地秀行著
祥伝社 ノンノベル
1998年12月5日第1刷
定価781円

 「〈魔震〉戦線(完結編)」以来、久々のシリーズ最新刊。
 中編を2本収録。
 「白髪頭の戦士」は孫娘を返せと秋せつらのもとに現れた老女の話。実は、孫娘をさらったせつらは偽者。代々妖物に祟られている家の姉弟が、その妖物を退治する囮として娘を選び偽のせつらでおびきよせたのだ。妖物にさらわれた娘を探すせつら。一方で、老女はその妖物と戦う。リューマチに苦しみながら戦う老女の存在感が圧巻。せつらもそれなりに活躍するのだがここでは影が少々薄い。それもまたよし、か。
 「ベビー・フェイスの無頼漢」は、せつらの店に転がり込んできた赤ん坊の話。幼児のエネルギーを成人に注ぎ込み若返らせる医師と、それを悪用するヤクザが登場。赤ん坊にいざなわれるように、せつらは医師と対決する。こちらは完全に赤ん坊が主役。幼児虐待に対する批判というようなメッセージ性が強い、異色作。
 今回はいずれもせつらやメフィストは脇役。しかし、長く続いているシリーズで、特に最近はスケールが大きくなる一方なだけに、このような小品の味わいは格別であったりする。

(1999年1月8日読了)


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