「新宿」区外から持ち込まれる麻薬。それは、自分が思い描く相手の分身を体内から出し、その分身と相手が触れあった時に双方を消滅させてしまう。そして、自分も死んでしまう。もともとは「新宿」で生産されたものなのだ。製薬会社が区外から海外にまで販売し、戦場で兵器として使用されるているという。
この薬「シャドー”X”」の製造販売を阻止しようと内部告発した製薬会社の社員、嵯峨。かれはかつて秋せつらにある女性を助けるよう依頼したことがあった。その女性、朱美は今は区外で幸福に暮らしている。嵯峨の危機を知った朱美は再び「新宿に」に足を踏み入れ、せつらに嵯峨の捜索を依頼する。
嵯峨と朱美という、正義感や義侠心で行動する、このシリーズには珍しいキャラクターを軸にした物語。「魔界都市ブルース6(童夢の章)」もそうだったけれど、ここのところせつらやメフィストの前に一途な思いを持つ人物が現れて彼らが主役を食うというパターンが続いている。シリーズのクライマックスを前にして、こういった人物たちが出てくるのには何か意味があるのかもしれない。この「シャドー”X”」という麻薬も今後の展開の鍵になりそうな気がする。そういう意味では、本書はシリーズのターニング・ポイントなのかもしれないね。
(1999年1月23日読了)