読書感想文


夢幻調伏
斎姫異聞
宮乃崎桜子著
講談社X文庫 ホワイトハート
1999年2月5日第1刷
定価490円

 「六花風舞」に続くシリーズ第4巻。
 義明が、貴子が、自分の願望がかなったあとみるも無惨に打ち砕かれる悪夢を見る。時の権力者、藤原道長もまたその一人。道長は、日頃恐れている姫宮の仕業と決めつけ、義明に謀反の濡れ衣を着せた上で姫宮を斎院のもとに送り監視する。いずれ彼らを処分しようという魂胆である。義明は、親友の僧、重家とともに、姫宮のカゲである火華鬼の力を借りて亜空間に入り、夢魔と対決する。
 前巻の余話といった感じのエピソードで、シリーズの展開には特に大きく変化を与えるものではない。しかし、人々の欲望に付け入って悪夢を見せ疑心暗鬼に追い込む夢魔とそれに対する義明たちの戦いの描写などは、相変わらず読ませる達者な筆だ。
 お互い愛しあっているのになかなか本心を伝えられない義明と姫宮が、この事件を通じて本心を見せ絆が少しずつ深まっていくというところあたりで、今後のシリーズの展開に少しは影響を与えるのだろうね。

(1999年2月9日読了)


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