読書感想文


大江戸爆裂攻防記 虚船2
松浦秀昭著
朝日ソノラマ文庫
1999年2月28日第1刷
定価570円

 「虚船 大江戸攻防珍奇談に続くシリーズ第2作目。やっぱり、シリーズ化してしまったんですね。とはいえ、デビュー作よりも私には面白く読めたんで、それはそれでよいのだが。
 宇宙人のあやつる「虚船」から江戸の町を守る「青奉行」。三代目の鳥居妖蔵(鳥居耀蔵のもじりですね)は虚船と戦うよりも武器を貯えることに熱心である。しかも奇人学者の安藤練三が開発した「ボンベン」という各爆弾を使ってなにやら企んでいる様子。筆頭与力友野武次は異星人と交信したときの知識から「ボンベン」が危険な兵器と判断し、その量産を止めようとするが、奉行によって逆にお尋ね者となってしまう。友野は最後の手段とばかりに尾張へおもむき、先代奉行、浅葱の協力で鳥居の陰謀を阻止せんとする。
 江戸時代の人間たちと異星人の戦いという前巻の構造に対し、本書は「青奉行」内部の人間関係と虚船に乗る異星人たちの抗争を並行して描き、うまくリンクさせていくという構成で物語にふくらみがでてきている。また、主人公である浅葱がなかなか登場せず、まだかまだかと読者をやきもきさせるなど、改めてこの作者のうまさを感じさせた。
 キャラクターのデフォルメは前作よりも抑えられているので、その分わざとらしさが減ってすっと読むことができた。ただ、異星人の扱いはちょっと類型的かなという気もしなくはないが。特に異星人のメンタリティがあまりにも人間臭いのが気になる。異星人ではなく、現代の人間が過去に行って歴史に介入するという設定の方がしっくりくるような。まてよ、実はそういう設定なのかも。シリーズの最後にあっという結末として用意されているのか。
 まさか、そんなことはないよね。

(1999年2月27日読了)


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