読書感想文


回転木馬の夜
妖怪寺縁起 2
冴木忍著
角川スニーカー文庫
1999年3月1日第1刷
定価500円

 「花の影、水の月」に続く、シリーズ第4冊。短編を3篇収録。
 表題作「回転木馬の夜」は、妖怪寺にもちこまれた回転木馬のオルゴールにまつわる因縁を描く。既に亡くなっているオルゴールの持ち主の残した思念が、孤独な者の心をひきよせ、異界へ連れていくのである。大切な仲間たちが異界へと連れていかれた蔵人は彼らをこちらの世界に引き戻そうとするが……。
 「夜明けの向こう」は、多輝と和馬の二人が夜の妖怪寺を散歩していたら、寺に盗みに入った青年と出会う。青年はたてつづけに現れる妖怪に右往左往するが、実は、その青年の秘密は……。
 集中のベストは「約束の日」だろう。蔵人の幼なじみで消息を絶っていた麻里から手紙がきた。彼女は母の再婚で瀬戸内にある村の網元の家にいたのだ。その網元はかつて人魚を生簀に飼っていて、どこかに隠された人魚の行方を求めた麻里の義父は崖から墜落死、母も意識不明の状態になっていた。家では姑の絹代が権勢をふるっている。蔵人は人魚探しを手伝うはめに。人魚から見た人間たち、人間から見た人魚の視点の違いなど、随所に工夫が凝らされていて、展開も二転三転して読者を飽きさせない。
 ただ、どの話も必ず親の勝手で家庭崩壊した子供たちの不幸という設定になっていて、1冊の本の中でこれを3連発もされるとなんだかしつこい感じがするのは否めない。そこらあたりはもう少しバリエーションを持たせてほしいところだ。雑誌に掲載された時点ではそれでもいいと思うが、こうやって1冊にまとめるときには一考してほしいところだ。

(1999年2月28日読了)


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