読書感想文


花の影 水の月
妖怪寺縁起 1
冴木忍著
角川スニーカー文庫
1998年3月1日第1刷
定価480円

 「星空のエピタフ(上)」「星空のエピタフ(下)」に続く第3弾。ではあるが、版元が変わった(親会社になっただけだが)ので、「妖怪寺縁起 1」とクレジットされている。
 中編を2本収録。”花の影 水の月”は行方不明になった姉、綾乃を探しに行った蔵人が、鏡のなかに閉じ込められた愛するものと結ばれなかった娘の霊を助ける話。”遠く潮騒を聞きながら”は仁巳が遺産を譲られることになり骨肉の争いに巻き込まれ、何者かの強烈な思念によって動く獣と戦う話。
 いずれも古い”イエ”制度に縛られていった女性たちの思いを中心に描いていて、男性作家ではあまり取り上げないテーマといえよう。そのため、前作とはかなり風合の違った作品に仕上がっている。
 「星空のエピタフ」のイラストは男性で、今回は女性に変わった。そのせいか蔵人や仁巳のイメージがかなり違ったものになってしまっている。版元も変わり前作との間もあいているとはいえ、イラストに負うところの多いヤングアダルト小説なのだから、もう少し配慮がほしい。

(1998年4月18日読了)


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