読書感想文


皇国の守護者 3 灰になっても
佐藤大輔著
中央公論新社 C★NOVELSファンタジア
1999年2月25日第1刷
定価850円

 「皇国の守護者 2 勝利なき名誉」に続くシリーズ第3巻。
 少ない兵で皇国を救った新城は、実仁親王の信頼を勝ち得て近衛軍の傘下にはいる。訓練不足の兵を率い、東方辺境に進行してきた帝国軍を迎え撃つ新城。敵は新城が捕虜となったときに彼の性格を知りつくしたユーリアたち。新城に敵愾心を抱き抜け駆けをする佐脇ら、味方であるはずの皇軍に足を引っ張られながらも敵本陣近くまで攻めこんだ新城だったが……。
 この巻に入り、ますますファンタジー色が薄くなり、異世界戦略小説と名づけたくなるような展開。特に、敵の飼う翼龍が原始的な爆弾を投下するというような飛行機を翼龍に置き換えただけといった感じの設定など、せっかく異世界を構築したというのになんだかもったいない。
 本書の見所は、新城の個人秘書となった両性具有者、天霧冴香。現在は女性としての役割しか与えられていないが、今後の展開次第では両性具有者ならではというような見せ場があるだろう、と期待している。本書ではこの設定も十分に生かされているとはいえないが……。無性人間というと、つい手塚治虫の「人間ども集まれ!」と比較してしまうもんで。
 ほんと、次巻以降は異世界ならではという展開を見せてほしいのである。

(1999年3月1日読了)


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