「帝都探偵物語1 人造生命の秘密」に続く第2弾。
大学教授大円寺義介の愛娘、美冬は天才少女ピアニストとして知られる。帝都で初めてのクラシック演奏会に出かけた十三郎一行は、演奏直後に美冬をおそった謎の魔人と対決することになる。魔人は大円寺に恨みがあり、その家族を狙うと宣言。大円寺の長男、真一はぶあつい警戒網に守られながらもそれを突破した魔人に殺害される。十三郎と渡は魔人の正体を人狼と知り、なぜ彼が大円寺を狙うのかを調査する。そこには意外な真相が……。十三郎たちは人狼を倒すことができるのだろうか。
これまでのこの作者の作品の中では、もっともよくまとまっていて面白く読めた。もっとも、人狼の正体がわりと早くわかってしまうので、謎解きを楽しもうという向きには物足りないかも。それと、せっかく大正末期を舞台にしているのだからできればもう少し美文調でやってはどうかとも思う。要は冒険活劇のおもしろさを現代によみがえらせたいのだ。とすると文体もまたその重要な要素の一つであると思うのだ。その点ではまだまだ食い足りないところが残る。題材など傑作になりうるところがそろっているのに、もったいない。
(1999年3月14日読了)