「白い山」に続く大河長編の第7巻。
本巻の主な舞台は北米と、そして欧州の〈下階〉における黒社会。
北米では、不死を望む老実業家、チャールズ・リーヴァーから独立しようとした息子、マイケル・リーヴァーの対立が軸となる。老リーヴァーは不死プロジェクトに天才少年キム・ワードの力を必要としている。しかしキムはマイケルト組んで新たに事業をおこそうとする。老リーヴァーはあらゆる手段を使ってキムとマイケルを妨害。若きリーダー、ジョーゼフ・ケネディがマイケルの味方につき、なんとかキムは欧州に脱出。自暴自棄になったマイケルは秘書のエミリー・アッシャーに救われる。彼女は元テロリストであったが、自立しようとするマイケルにひかれ、老リーヴァーの反対をおして結婚する。また、キムはエルカ・トローネンと再会、互いに不可欠な存在であると認め、将来を誓い合う。しかし、エルカの父、トローネン元帥は反対し、彼女をキムから引き離すために土星に旅立たせる。
欧州〈下階〉の黒社会には反逆者ディヴォアの部下であったレーマンが出現し、巧妙に組織に入り込み、勢力を広げていく。
今回は自立する女性を代表するエミリーの存在が際立つ。儒教的伝統に押しつぶされそうになる若い世代を代表し、様々な側面で新しい世代を支える力となる。また、本巻初登場のケネディは、新しい世代のリーダーとして登場しながらその地位を維持していくために北米のタン、武シーと密約を結ばねばならない二律背反の苦悩を抱える人物として描かれている。
不死を実現させようとする老人たちの醜さなども見どころの一つか。
(1999年4月10日読了)