「血と鉄」に続く大河長編の最終巻。
いやあ、とうとう読み通したぞ。長かったぞ。きっちり1ヶ月かかったぞ。
宇宙に飛び出したキム・ワードたちが地球に戻りディヴォアとの最後の対決に臨むことを決意する。キムは苦しみながらも空間を跳躍して地球に戻る方法を導き出す。その過程で、碁聖トアンがキムに真の自分の姿を見せ、ディヴォアと自分の関係を語る。また、パラレルワールドの存在を示唆するが、実験の過程でキムはもう一つの世界の自分と出会い共同でディヴォアにあたることにする。二人のキムが移動したのはまた別のパラレルワールドであったが、その世界のディヴォアを倒すことで全ての世界からディヴォアを抹消することができる。
一方、本来の(?)地球では知性を持つ植物群のフローラフォーラムが出現し、荒れ地を浸食しはじめる。それらはどのように根絶しようと自らを再構成する力を持ち、この世界のディヴォアでも太刀打ちできない。新しい地球の主人はこのフローラフォームであることを察知したエミリーたちはシャトルで地球を脱出する。この世界のディヴォアもまたキムたちが行った世界に行き、そこのディヴォアを援助する。そこに立ちはだかった者は……。
ラストの大団円まで、一気に物語が進み、二転三転するめまぐるしい展開に圧倒された。この大河長編はSFでなければ描けないテーマを扱ったものである。そして、最後の展開と決着はSFならではと感じさせるものであった。
作者は、光と闇、陰と陽、父性と母性など二項対立を常にストーリーの軸に置き続け、多数の人物をその軸に沿って動かしていった。この対立は陰陽思想など東洋的なものを基盤としているように見えるが、私には逆に英米の二大政党制に代表される正反合の弁証法的な思想により近いものを感じた。イギリス人の作者なりに陰陽思想を消化したらこういう形を取ったといえるのかも。
分量が分量だけにどなたにもお薦めはしないけれど、機会があれば一度読んでみてほしい。一つの歴史を構築するということがいったいどういうことなのか、その答えがここにある。
(1999年4月29日読了)