「夢幻調伏」に続くシリーズ第5巻。
本巻では姫宮を恐れる藤原道長が、太圭智と名乗る若き術者と接触し、姫宮を倒すように依頼する。その後、姫宮の式神を操る力が衰え、彼女は”神の子”として自分がこの世に生きている価値がなくなってきたのではないかと苦しむ。夫の義明にはその姿は見せないが、彼はそのことに気づき、普通の人間としての幸せをつかんでほしいと望んでいる。
道長が囮となってわざと太圭智の呼び寄せた亡者たちに襲われる。そこへ姫宮を呼び、倒してしまおうというのだ。式神を使えず苦戦する姫宮。彼女は自らの命を犠牲にして帝のいます京を救おうとするが……。
今回は、姫宮とカゲの秘密を解く鍵が描かれる。長期シリーズになり、このように小出しにしていくという手法は効果的だろう。
このように姫宮側の描写が細かい分、敵側である太圭智の存在感がこれまでの巻に比べるとやや弱いように感じられた。そうなると、物語の軸足がぶれてしまう。敵と戦う中で姫宮の秘密などを解き明かしていくというシリーズ展開だというのはわかるので、戦いにしっかりと軸をおいてからさりげなく秘密を解く鍵を提出するという感じで進めていってほしい。
(1999年5月22日読了)