読書感想文


カナリア・ファイル7 変若水おちみず
毛利志生子著
集英社 スーパーファンタジー文庫
1999年5月10日第1刷
定価514円

 「カナリア・ファイル6 黒耳天女」に続く第7弾。
 有王は「綾瀬」の秘密を探るため「鴻哭寺」にたどりつき、そこに住む芙蓉という老婆から樹浬と「綾瀬」の大老、綾瀬広野との関わりや、広野がどのような力で一族を束ねるようになったかを聞く。全てを語り終えて芙蓉が死んだとき、綾瀬一族の重鎮、多津子が現れ、戦いとなる。しかし、多津子もまた広野に背く意志を持っており、「鴻哭寺」を訪れた樹浬たちと合流する。
 一方、有王の元婚約者である天童桜が登場し、広野を倒す鍵となる「七星剣」を求め、福島へ。彼女はそこで「七星剣」を手に入れるが……。
 いやまあこの、今回明らかになる爛れた人間関係がまことによろしいなあ。綾瀬一族は単なる悪の組織ではなく人の悲しみを飲み込みながら生き延びてきた一族であったりするところもまたよろしい。主人公であったはずの有王はすっかり狂言回しになってしまったけれど、彼の力をもってしても、その力さえ無力に感じられるというのもよろしい。
 できれば全登場人物の相関図をもっとくわしく書いてほしい。かなりくわしいのだけれど、さらにややこしい。登場人物一覧もしかり。たった6名だけしか紹介してないのはあまりにも足りないぞ。それぐらい多彩な人物が入り交じり、しかもそれぞれに深い関わりを持つ面白い話なんですな。
 もうそろそろ有王と広野の直接対決というところにさしかかりつつある。ちょっと有王に分のない展開だが、タイトル通り「カナリア」の耀の存在が鍵になるんだろうね。

(1999年5月23日読了)


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