「ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王」に続くシリーズ第5弾(6冊目)。
ブギーポップ誕生秘話もしくは霧間凪はいかにして炎の魔女となったか。というような副題をつけたくなる。もっとも時系列や語り手を錯綜させながら一つの物語を作り上げていくという作者のスタイルはここでも変わってはいない。
〈統和機構〉の刺客が持っていた進化を促進する薬を手に入れた女医、来生真希子の肥大した自我を強調して描いて見せ、それをブギーポップが倒すというのがメインストーリーであったりするわけだが、それ以上に凪の成長の方を強調しているようだ。このシリーズは実は凪の物語なんだよと言わんばかりの描き方だ。
〈統和機構〉をなるべくステロタイプな悪党にしないために作者はかなり苦心しているように見受けられる。しかし、〈統和機構〉そのものの物語が成立していないのだから、結局はたんにブギーポップや凪を際立たせるための道具にしかなっていないというように、私には感じられた。もっとも、この物語がブギーポップたちの日常に近いところばかりを舞台にしている以上、〈統和機構〉もその範囲にとどまってしまうわけで、それはそれでいいのかもしれないが。
ところで、文中に「つまりません」という表記があって、なんかひっかかってしまった。「つまらない」は「つまる」の否定形ではなく「つまらない」という形容詞なのだから、「つまりません」という表現はとられない。もっともこれは作家に若い読者が出した手紙の中に出てくる表現だから、わざとその若者がものを知らないということを強調するためにそういう表現を使った……というわけでもなさそう。重箱の隅をつつくようだが、こういうのはちゃんと編集者が指摘してやるべきではないだろうか。
(1999年5月29日読了)