「ヴァレリア・ファイル 上」に続く完結篇。
レティ、ジョーズとも無計画に大胆なことをするのでかえって川崎は翻弄される。全て計算ずくで計画を進める怜悧なエリートの急所、というところか。かくしてヴァレリアの奪還は成功。ヴァレリアはHF計画を根本から断つ妙手を打ち、人を見下すことで矜持を保っていた川崎はそれがゆえに一敗地にまみれるのであった。
もともとヤングアダルトとして書かれた作品である。したがって、各キャラクターの個性はかなり誇張され、漫画的にはなっている。しかし、アイデアやストーリーに手抜きやご都合主義的なところがなく、決してキャラクターのみに寄りかかってはいないところはさすがだ。
まだ個人にそれほどパソコンが行き渡っていなかったころに、情報ネットワークに着目し、これだけの世界を構築しているのだから、その先見性に驚かされる。
文庫版5冊を2冊にまとめるにあたり加筆訂正が行われ、1本の長編として読むことができるようになっている。面白さは抜群、一気に読める。未読の方はぜひご一読を。
(1999年6月5日読了)