「帝都探偵物語2 闇を呼ぶ人狼」に続くシリーズ第3弾。
フランケンシュタイン・モンスター、狼男とくれば、とうぜん本巻は吸血鬼。
大正末期を舞台に既存のガジェットを織り込んで綴られるこのシリーズ。作者も書き方のコツをつかんだか、けっこう面白くなってきた。というか、モチーフは既存のものを使っているんだから思い切って動かしてやろうという感じの、いい意味での開き直りみたいなものを本巻では感じるのだ。
ただ、前巻でも指摘した欠点が全て改善されているわけではない。例えば、野望を秘めて吸血鬼を日本に連れてきた元軍人の死んだ恋人と、主人公十三郎の秘書、礼乃が瓜二つであることなんかがそう。いくらその元軍人が精神的に異常をきたしているとはいえ、既に死んでいるはずの恋人と礼乃を同一視してしまうというのはいかがなものか。しかもそれは事件解決の鍵を握っているのだ。肝心のところがご都合主義的ではせっかく面白くなってきているのに、興醒めしてしまう。
(1999年6月7日読了)