「明星快演」に続くシリーズ第3巻。今回は子玉の伯父、公孫先生が妖狐使いであるという訴状が役所に届いたのが発端で、先生の弟子で役人の蔡思文と子玉が先生の無実を証明するために東奔西走する。私としてはやんちゃ娘の巧娘が少しばかりお行儀よくなってしまい、思ったほど引っかき回してくれなかったのがちょっと寂しいけど、子玉くんとの関係がなんとなく恋人っぽくなっていったりしているせいもあるからかな。
キャラクター、ストーリーとも練れているこのシリーズは、本巻でも安定した筆致で楽しませてくれる。訴状にしろ、そこから派生する事件にしろ派手なところなど一つもないのに、読み手を引きつけて放さないものがある。全体に明朗でほんわかしているところがいい。どちらかというと敵と戦う殺伐としたシリーズの多いヤングアダルト小説の中では異彩を放っているといっていいだろう。貴重な存在である。
しかし、いくら1年ぶりの刊行といういくぶんゆっくり目のペースとはいえ、カバーの見返しにも奥付の後の広告にもこれまでの2冊について一切書かれていないというのはどうしたことか。爆発的な人気はないかもしれないが、この扱いはなかろう。それともわずか1年で品切れにしてしまっているのだろうか。もしそうなら、いくら回転の早いヤングアダルト文庫とはいえ、あんまりだ。
(1999年6月12日読了)