「冬の緋桜」に続くシリーズ第5弾。
これまでの巻とは一転してトーンが変わり、主人公たちの過去世での因縁が描かれる。
合宿先で、自分が高陽を殺す夢を見た勇帆は夢に出てくる場所を探す。勇帆と合流した高陽らとともに、転生する以前、平安時代に生きていた彼らの体内に封じられる。そこで繰り広げられるのは玉藻前と陰陽師との世界滅亡を賭けた戦いであった。
戦いは本書では終わらない。次巻がシリーズ完結篇だという。本巻はそういった展開のため、これまでの「癒し」的な側面はない。伝奇的な要素を持ったオカルト・アクションといった感じの話だ。このシリーズは平凡な人間なが特別な能力を持っているということに特色があるわけで、そこからにじみ出てくる「優しさ」に意味があると私は考えている。だから、完結時にはシリーズ全体に流れるそういったトーンに意味を持たせるようなものであってほしいなあと思う。
(1999年7月4日読了)