読書感想文


月の系譜 凍てゆるむ月の鏡 一
金蓮花著
集英社コバルト文庫
1999年8月10日第1刷
定価419円

 「有明の鬼宿」に続くシリーズ第6巻。外伝的であった前巻から、本巻はストーリーの本線に戻る。
 いよいよ物語は佳境に。山吹泉は過去の……前世、常世姫と呼ばれていたときの……記憶をかなり取り戻し、目的達成のために必要なメンバーを次々とその配下に加えていく。第1巻で登場したときの「平凡な高校生」の姿は、ただ単に世を忍ぶ仮の姿でしかないのだ。気高く美しく冷酷な常世姫として、泉は再生した。ただ、時折、泉の顔を見せる瞬間もある。その見せ方の間がうまいなあ。
 霊能を持つ少女を見つけた泉たちは、女子校に転入し、その少女を仲間に加えるべく動き始める。
 あとがきによると、このエピソードでシリーズを完結させる予定であるようだが、本書は壮大なクライマックスの序章という感じである。いくぶん静けさをともなっているが、だからこそ物語が大きく動いていく直前であることを示しているように感じた。
 評価は、完結してからでないと下せないけれども、本書を読んだ限りでは期待を裏切らないものになりそうだ。

(1999年7月27日読了)


目次に戻る

ホームページに戻る