読書感想文


ペリペティアの福音 中 聖誕編
秋山完著
ソノラマ文庫
1998年8月31日第1刷
定価550円

 「ペリペティアの福音 上 聖墓編」の続刊。
 ファンランに手渡された壺は、フォークト大帝の墓を出現させる。このため、ファンランの帝位継承は確定。ティックはファンランとの関係をマスコミに取りざたされる。キャルはこれを利用し、ファンランをヨミ・クーリエ社の陣営につけようとする。盛大な葬儀のあと、墓を開いた結果、ファンランは過去に女盗賊であった野心を持つ自己を取り戻してしまい、純真無垢な姿はかき消えてしまう。ファンランはゲルプクロイツ社と組んで銀河の支配者になる道を選ぶ。ファンランを得たゲルプクロイツ社がもくろむ〈生命樹計画〉とは……。
 物語はファンランをめぐり二転三転。誠意のかたまりのティックでは太刀打ちできない。それでもティックを愚直なまでに人の命を大切にする男として描ききっている。覚醒前のファンランを徹底的に無垢で純朴な少女として描いていた。それが、物語が反転したとき、おおいに生きてくる。どんどん敵の思うつぼになる展開など、読んでいてどうなることかと読者をとらえて放さない。
 また、ペリペティアの輝砂など、SF的な大ボラをうまく織り込んでいて、そのアイデアも十分楽しめる。いよいよあと1冊で完結。楽しみである。

(1999年8月14日読了)


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