読書感想文


私と月につきあって
野尻抱介著
富士見ファンタジア文庫
1999年8月25日第1刷
定価580円

 「天使は結果オーライ」に続くシリーズ第3弾。
 ロケットガールズに対抗してフランスがアリアンガールズを結成、月旅行を計画する。ロケットガールズも手助けをするために計画に参加することに。アリアンガールズのリーダー、ソランジュとゆかりはそりがあわず、前途が思いやられる。度重なるアクシデントを乗り越え、少しずつメンバーが減っていく中でソランジュとロケットガールズは月着陸を強行する。ついに月面に到達したソランジュとゆかり。しかしも着陸の際の事故で月から脱出できなくなってしまう。茜たちが考えた帰還作戦は成功するのか……。
 作者の宇宙旅行への愛情が結実した1冊。特に、月に着陸してからの展開はスリリングかつ感動的。ひとつの目標に向かって協力する中で芽生える友情という、少年小説らしいストーリーも好感が持てる。
 ひっかかったところがひとつ。月へ旅立つまでのアクシデントで、アリアンガールズのうち2人の妊娠が発覚してメンバーからはずれるというくだりである。月旅行という大事をひかえて避妊をしないというのは、いくらなんでも自覚がなさ過ぎるのでは。そういう自覚のないものを国家が宇宙飛行士に選抜するだろうか。ロケットガールズを活躍させるためにアリアンガールズのメンバーが脱落していく展開はストーリー上必要だったとは思うが、2人も妊娠させるという必然性が感じられなかった。フランス側の乗務員管理の甘さを描くなら、他にも方法があったのでは、と思う。
 月旅行を描いた作品としては非常に優れているだけに、残念である。

(1999年8月22日読了)


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