読書感想文


陰陽寮 弐 怨霊篇
富樫倫太郎著
トクマノベルズ
1999年7月31日第1刷
定価1300円

 「陰陽寮 壱 安倍晴明篇」に続くシリーズ第2作。
 前巻は晴明と道鬼の呪術合戦が中心であったが、本巻は宮中の女御の失恋から起こる怨霊騒動という展開。前巻では雑多であった登場人物も、本巻では比較的整理されていて話の軸もしっかりしている。したがって、ずっと読みやすくなり、掘り下げた書き込みもなされている。
 単なる女御の生霊と思われていたものが、実は大和の古族と荒ぶる神の怨霊であったことが徐々に解明されていく構成は、読み進むうちに物語のスケールが大きくなっていく面白さを感じさせる。また、続編といいながらも、物語の時系列は前巻と並行しているというのもユニーク。無関係と思われた話が微妙にからみあっているところなど、なかなか考えてある。
 残念なのは、善悪がはっきりと色分けされ過ぎているところ。勧善懲悪がこれだけあからさまというのは、あまりに単純すぎてどうかと思う。これだけ雑多なものをひとつの物語に編み上げていくのだから、善悪もまた混沌としていた方が深みを感じさせる読み応えのあるものになっただろうに。

(1999年8月27日読了)


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