「殺生石伝説」に続くシリーズ第6弾。完結編である。
高陽と勇帆の前世での関係は、輪廻転生を繰り返しながら、必ず愛し合い、そして勇帆が高陽を殺さなければならないというものであった。友の力でいち早く自分を取り戻し、意識を回復した勇帆だが、高陽は過去の因縁がまた繰り返されることを怖れてか、意識を自己の内に封印したまま意識を取り戻さない。高陽の魂を救済するため、勇帆は高陽の内に飛び込んでいく。
シリーズを貫く「癒し」「救済」というテーマは、登場する若者たちの自立という形で完結した。本シリーズで繰り広げられる戦いは、強大な敵ではない。あくまで自分自身との戦いなのである。いささか説教臭くなってしまうのは私の好みではないので、そこが残念ではある。高陽があくまで自分自身と、そして友の支えで自立へといたるという展開になれば、よりポジティブな印象を与えたであろう。
とはいえ、地味ながら、最後の最後までテーマを貫き通したところを私は評価したい。
(1999年9月5日読了)