「陋巷に在り9眩の巻」の続刊。
媚術から解かれた少女に、顔儒の太長老が語る、孔子の母の物語と蠱術にとりつかれた仲間の命を救うために顔回が医師を助ける様子の2つの流れで構成されている。孔子の母については、作者の想像力が十分に発揮されている。本書での孔子は顔儒の伝統を壊し新しい礼法を作り出す存在として描かれているが、母が彼を産んだのが顔儒の形骸化した伝統を原点に帰って根本的に改める子どもを産めという神託に基づくものだったことが明らかにされるのだ。つまり孔子は神によって定められた運命を歩んでいることになる。
相変わらず安定した筆致で書き進められていて、本巻はどちらかというと大きな山の間をつなぐブリッジのような印象のある巻ではあるが、謎を明らかにしていく端緒として今後の展開に重い意味を持つような気がする。
(1998年10月10日読了)