「カムナビ 上」の続き。
「カムナビ」が再びこの世に現れないように防止する指名を帯びた白川一族の娘、祐美とその父、幸介は、志津夫と真希が熱田神宮から草薙の剣を奪うのを阻止しようとする。しかし、志津夫は無意識のうちに「カムナビ」を呼び、熱田神宮は炎上。剣を入手した志津夫たちは奈良の三輪山へ。封印をといた真希の前に現れたものは……。そして、「カムナビ」の原理とはなにか……。
これ以上書くとネタが割れてしまうから少し抑えておくが、いくら伝奇SFといえども、あまりにもトンデモな展開になってしまい、驚いた。強引な展開だと感じた。神話に隠された真実というならば、神話に書かれたことに即したものであってほしいのだが、作者の空想はそんなものを飛び越えて宇宙空間にまで行ってしまう。まあ、壮大なホラ話といえるし、大風呂敷を広げているともいえる。私はそういう話が好きなはずなのだが、本書に関してはそのあまりのリアリティのなさに唖然としてしまった。大バカSFの傑作になりうる設定ではあるのだが、小説の書き方がうまくないので、怪作としかいえないものになってしまったというのが正直な感想。
ラブシーンがあったらしいのだが、ラブシーンだとは思わずに読み進んでしまったりするのは、実に困ったものだ。女性に対する見方の表面的なところも気になる。私と作者では「小説」というものの考え方が違うのかもしれない。面白くなりそうなところで見事にツボを外しまくってしまっているというように感じられた。
(1999年10月16日読了)