「暁闇新皇」に続くシリーズ第7巻。
和泉式部と愛し合う男は病を得て早世するという噂がたつ。その相手が皇太子の兄弟たちだったので、くちさがない女房どもは和泉には狐が憑いていると陰口をたたく。和泉に取り憑いているものは、噂通り狐なのか。姫宮と義明は、宮中に出仕する従姉妹の貴子に頼み、和泉の身辺を探らせる。その貴子は深夜、何者かに襲われ……。
シリーズが長期化してきて登場人物のキャラクターがかたまってくると、その設定で物語が動いていき、内容がややもすると薄味になる場合がある。本書には若干そういった傾向がうかがえ、好きなシリーズだけに少し不安を感じた。
本書で進展したのは貴子の恋をめぐる人間関係くらいで、狐の背後にいる怨霊にしろ姫宮のカゲも物語の鍵を握りながら、大きな変化は見られない。
職人芸的にまとめているという印象で、ここまでのシリーズの展開を考えるといささか食い足りない感じがした。
(1999年11月16日読了)