「傀儡覚醒」に続く、シリーズ第2巻。
前巻で仲間を失った五鬼衆が、菜樹と海生に反撃を加える。菜樹の〈宇津保〉としての器の大きさを知らない五鬼衆の一人、頴は、彼女の力をあなどり、新たに五鬼衆に加わった少年、曠を差し向けて、菜樹をおびき寄せようとする。曠の力では菜樹を簡単に操ることはできない。しかし、菜樹はまだ自分の真の力を発揮できず、憎からず想う海生ともすれ違いの日々が続き、心を乱している。その揺らぎを突かれた彼女は、結局頴の手中に。海生は菜樹を助け出すことができるのか。また、頴の野望とは何か。
前作よりも登場人物が増えたが、それらを混乱させることなく描き、その分設定に奥行きを増すことに成功している。ただ、前巻で描かれた「まつろわぬ民」としての〈宇津保〉という側面がぬけてしまってはいるが。ユニークな発想で構築された世界であるだけに、単純な勧善懲悪にせずに、より重層的な奥の深い物語に仕上げてほしいものだ。この作者にはそれが期待できるし、次巻以降が楽しみでもある。
(1999年12月4日読了)