「ブギーポップ・ミッシング ペパーミントの魔術師」に続くシリーズ第7弾(8冊目)。
少年が街角で携帯ゲーム機に謎の男からゲームで集めるアイテムを手に入れる。その名は「エンブリオ」。実は、これは接触した者の潜在能力を発芽させる、いわば卵の殻を突き破る手伝いをする力をもった存在なのだ。「エンブリオ」を消滅させようと統和機構が放った刺客は「フォルテッシモ」(どうでもいいことだが「フォルティシモ」という表記の方が原音に近いと思う。これではまるでかなり年輩の方の発音みたいだ)と呼ばれる最強の超能力者である。「エンブレオ」を入手した少年、弘とその姉、顕子は否応もなく事件に巻き込まれる。そこに霧間凪の弟、正樹も関わることになる。
閉じた小さな世界で繰り広げられる大きな物語も、いよいよ佳境に入ってきたようだ。「フォルテッシモ」が不可能ということを知らないような存在になっていることなど、それをうかがわせる。見どころは「エンブリオ」に触発されて発現する超能力の描写だ。アイデアはなかなか秀逸で、人間の心理を巧みについたものになっている。
残念ながら1冊には収まりきらず、次巻に続くことになるけれど、「エンブリオ」の正体などが明かされるのかどうか、興味深い。
気になるのは説明過多の饒舌な文体。主格がひとつの章の中で次々と入れ替わること。全体を覆う説教臭。
説教に見られる青臭さが作者の魅力のひとつを形成しているのかもしれないが、私にはいささかうるさく感じられた。
タイトル通り、シリーズ完結への「カウントダウン」は始まった。この閉ざされた世界がどのような形で完結されるのか、謎は謎のまま放り出していくのか、気になるエピソードの開幕といえよう。
(1999年12月15日読了)