読書感想文


月と貴女に花束を2 妖龍の少女
志村一矢著
メディアワークス 電撃文庫
1999年12月25日第1刷
定価550円

 「月と貴女に花束を」がシリーズ化された。
 主人公の月森冬馬たち人狼族にかつて滅ぼされた悪魔族の生き残り、香沙薙桂が、人狼族の少女、由花に妖魔の種を埋め込む。この種は生物を奇怪な能力を持った別のものに変えてしまう力をもっているのだ。冬馬たちは由花を守るために桂の操る妖魔と戦う。
 少女の成長とともに発現する「妖魔の種」というアイデアはなかなか面白い。前作はラブコメとアクションの落差が激しかったが、かなりなくなりつつある。シリーズ化にあたり、「悪魔族」なるものの存在を捻出しているが、まだちょっと設定が固まりきっていないのか、もともとどういうものかわかりにくい。まあこれはシリーズが進むうちに解明させるのであろうが。前作ではあいまいだった「院」という組織については書き込みがなされているので、どういうものかわかるようにはなったけれど。
 アイテムを用い、成長してパワーを身につけた者のみがそれを使用できるというパターンはゲーム的だ。良くも悪くもゲームでうけているところを集めて小説にしたという感じがする。「愛」を声高に叫んだりするところなど、やはり梶原一騎の世界だ。この作者の作風がそうなのか、シリーズの性格がそうなのか、他のものを読んでみないとわからないけれど。私はどうもこの「『愛』のためなら死ねる」という感傷をストレートにぶつけられるのは照れくさいというか、苦手である。説教臭くなるからだろうか。
 もっと理屈抜きにアクションとラブコメに徹していけばいいのに、と思うのだが。

(1999年12月18日読了)


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