「リムーブカース 上」に続く完結編。自分を護ってくれると信じていた貴公子リグナーに裏切られた夏菜。彼は夏菜と悟が持つ過去の記憶を手に入れようと画策する。また、古代に悟が反抗した〈神〉につかえる天使、シスターカルチュアはリグナーの手から2人を奪い、やはり過去の記憶を入手しようとする。天使は、悟を倒すために最終兵器を投入するが……。
悟と夏菜、そしてリグナーの関係も明らかとなり、ストーリーとしては完結したが、〈神〉や〈天使〉の存在が、もう一つちゃんと説明されていないので、なんとなくすっきりしない。
平凡な少女が自立に向けて歩み始めるという成長物語の形はとっているが、ちょっと類型的な感じもする。アクション小説であるからして、戦闘シーンにウェイトが置かれているので、細かなところまで書き込めなかったのかな。しかし、〈転生〉や〈呪い〉については比較的合理的な説明がなされているのだから、その文脈で〈神〉などについてもきちんと処理すべきだろう。
全巻を通じて、神や文明について問い直すというテーマと、少女の成長というテーマと、派手なアクションと、どこに軸を置くかが明確になっていないからこうなったのではないかと思う。せっかくの見せ場も、それまでに十分な説明がなされないままそこに突入してしまっているので、なぜ登場人物がこんなに暴れなくてはならないかというところの説得力が弱いというような感じだ。
神や文明という壮大なテーマを語るには、まだこの作者には手に余るのではないかというような読後感が残ってしまった。ただ、そういうものに挑戦する姿勢は買いたい。あれもこれも書くのではなく、絞り込むということをしっかりやれば面白いものができるのではないだろうか。
(1999年12月20日読了)