読書感想文


コールド・ゲヘナ 3
三雲岳斗著
メディアワークス 電撃文庫
2000年1月25日第1刷
定価590円

 「コールド・ゲヘナ 2」の続刊。
 このシリーズも本巻で一応一区切り。あとがきでは続編も予定されているらしいが、おそらく外伝的なものになるだろう。
 本巻では、地球がなぜ「ゲヘナ」と呼ばれるような荒廃した土地になったかのヒントが提出されると同時に、主人公バーンと愛猫メルの過去やアイスとフロスティの誕生にまつわる秘密などが解明される。そこには、地球を再生した「教団」と彼らが地球を統治させるために育てた「女王」たちの秘密も含まれる。これが説明的にならずにフロスティの誘拐や女王メリーアンと謎の戦闘機集団との戦いなど、様々な事件を描くことによって解明されていくようにしてあるところなど、3作目にしてこの作者の大きな成長が見られる。
 使われているガジェットにそれほど目新しいものはないのだが、ストーリーの運びやアクションシーンの書き込みなどでうまくカバーできているように思う。キャラクターがどうしても類型的になってしまうところがこの作者の今後の課題ではあると思うが、今後も書き続けることによってより一層の成長が期待できそうなので、そういった課題も克服していってほしい。
 作者は「第1回日本SF新人賞」を受賞したとのこと。ということは、これからはかなり多くの人たちから注目されることになるだろう。その出発点として、本シリーズが位置づけされることになるだろう。

(2000年1月13日読了)


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