読書感想文


外法師 神咒鏖殺行 巻之弐
嬉野秋彦著
角川スニーカー文庫
1999年12月1日第1刷
定価571円

 「狂骨歌」に続くシリーズ第2巻。
 神咒萬嶽が忍から助けた娘は、峨羅国の姫であった。隣国鳳茲に政略結婚で輿入れする姫、麻雪を霧真国の妨害から護るため、萬嶽は国王直々に雇われる。同行するのは前作でライバルとなった緋走咲矢と綾女の姉妹、そして麻雪姫の長姉、瑤樹。背に羽根を持つ謎の男や忍たちがつけ狙う姫の輿入れには、政略結婚以外の企みが隠されていた。妖しの術を用いる瑤樹と萬嶽たちの対決の時が迫る。
 無垢な姫とそれを利用する権力者、情に流されてしまう咲矢と徹頭徹尾雇われ仕事に専心する萬嶽というようにキャラクターの対比を巧みに生かしたストーリー、そして、敵と思えばまた味方、味方と思えば次の瞬間には敵という、正邪善悪入り乱れた展開が面白い。ここのところコミカル路線の影響をどうしてもぬぐい切れていなかった作者がデビュー時の味を取り戻しつつあるという印象を受けた。
 特に、ピカレスク・ヒーローである萬嶽のキャラクターが本巻ではかなり魅力が出てきて、今後も楽しみなシリーズになりつつある。
 ただ、前巻で明かされなかった謎は本巻では全くどこかにいってしまった感じだ。どうやら本巻に少しだけ登場してほとんど活躍することなく終わった西国の女性が次巻以降の展開に影響を与えそうなので、そこで解き明かされることを期待している。

(2000年1月22日読了)


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