読書感想文


皇国の守護者 4 壙穴の城塞
佐藤大輔著
中央公論新社 C★NOVELSファンタジア
2000年1月30日第1刷
定価850円

 「皇国の守護者 3 灰になっても」に続くシリーズ第4巻。
 〈帝国〉の辺境領姫ユーリアと〈皇国〉の天才将校新城の戦いに決着がつく。新城は六芒郭という城塞に立てこもり、〈帝国〉軍の侵入を防ごうとする。迂回して〈皇国〉の首都に攻め上ることができるのに、ユーリアは新城との戦いに白黒をつけないと気がすまず、両者は大半の兵を死なせてしまうほどの激戦を繰り返す。その戦いに不満を持つ〈帝国〉の軍人たちが現れ……。
 数で劣る新城が、いかにしてユーリアをくい止めるかという戦術が見どころ。好敵手との戦いはさも恋に似ているという様子が描かれる。それが本当の恋に転化していくとこらあたりは、これまでの作者のシリーズとひと味違うところかもしれない。
 それ以外は、前巻で感じたようにどんどん異世界ファンタジー的な色彩が薄くなり、軍略を中心としたシリーズになってしまっている。そう割り切って読めばよいのだが。せっかく異世界ファンタジー的な設定で始まったシリーズだけに、作者の新しい面が見出しにくくなっているのは残念なことだ。

(2000年2月2日読了)


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