「姫神さまに願いを〜永遠国ゆく日〜」に続くシリーズ第5弾。
カイとテンのコンビは熊野詣でに。途中で道成寺に立ち寄るが、そこで清姫の霊に追いかけられる。カイはなぜか安珍と間違えられたのだ。追いかけてくる清姫から聞いた安珍清姫伝説の真相とは……。
清姫は実は双子だったというアイデアを軸に、新たな安珍像を作り上げ、「道成寺」の物語に独自の解釈を展開させている。実に見事な時代伝奇小説なのだ。しかし、ラヴ・コメディという枠組みがあるために、カイとテンの道中の部分と、安珍清姫の部分の雰囲気がまるで違ったものになってしまっている。一冊の中でここまで文体が変わってしまっているのはバランスが悪すぎる。
シリーズの最新刊が出るたびに同じことを書いているのだが、本格的な伝奇小説を書ける資質を持っていることを本巻でも示しているのだから、この作者にはその部分をのばしていってほしいのだ。
伝奇小説として推薦したいのだが、そこに至るまでのラヴ・コメディの部分についていかれない人もいるだろう。万人にお薦めしにくいのはそこか。なんとももどかしい。
(2000年2月14日読了)