「回転木馬の夜」に続く、シリーズ第5冊。短編を4篇収録。
「春宵宴」「水無月怪談」の2編は初登場の由良之介少年を狂言廻しに使ったコミカルなもの。シリーズを貫いていた女性の苦しみなどのテーマはすっかり消えてしまっている。そのかわり、中途半端な霊力しか持たない者の悲喜劇が描かれる。
「夜の扉」は主要人物の日常を切り取ったショートショートを4話収める。
表題作「君の還る場所」はシリーズ全体の完結編となる。人間と妖怪の混血であるために鎌鼬らに狙われる蛇男の仁巳の物語。開発が進み居場所を失っていく妖怪たちと〈半妖〉と蔑まれながらも妖怪寺という居場所のある仁巳の心情を対比的に描く。
これまでのものよりも内容的にはちょっと弱い感じがする。「癒し」系のストーリーにシフトしてしまっているところなどは、作者が長期にわたってシリーズを書き綴っているうちに刻々変わっていく時代の空気を反映しているように感じた。
完結編とはいいながら、登場人物たちが自分の居場所を確認して落ち着くという形であり、作者がこのキャラクターでこれ以上ストーリーを作り出しにくくなってきた、という気がふとした。できれば長編で大きな山を作って完結させてほしかったところではあるのだが。
(2000年3月1日読了)