「魔術戦士 3 牧神召喚」に続く第4巻。
版元が変わって復刊が遅れていたこのシリーズも、やっと未文庫化分に突入した。
W∵O∵R∵M∵の日本寺院のマスターに就任した平賀慶は、前巻で死亡したパンターの血を浴びてその力を強め、冷徹な悪の権化へと変貌した。彼は人工衛星を使った通信網によって人々に絶望に至る幻想を抱かせるという作戦に出る。それを阻止しようと志門聖司が動き出す。しかし、W∵O∵R∵M∵は日本に世界各地から新たな魔術師たちを呼び出し、迎撃体制を形作る。その中の一人、ハーバート・ロング・ナイトを追ってS∴W∴O∴R∴D∴の双子の魔術戦士ジャックとジルが登場。ジルは倒されたが、ジャックは志門とともに平賀の陰謀を阻止する戦いに加わる。
本巻からは科学技術をうまく魔法にからめた形で敵側の陰謀が進行する。そのからめ方がよく練り上げられていて、矛盾を生じていない。また、敵がパワーアップしても主人公がやすやすとそれを撃破するというパターンのヒーローものはよく見かけるが、本書の場合、そのような安易な方法はとらず、強敵が強敵らしく力をふるうところにも好感が持てる。
つまり御都合主義とは無縁なのだ。
敵の作戦は本巻ではみごと成功してしまうが、はたして志門たちに挽回の道はあるのか。緊迫感をたたえたまま次巻に突入するところも憎いばかりだ。
(2000年3月24日読了)