読書感想文


∀ガンダム 4.火と月
佐藤茂著
矢立肇・富野由悠季原作
角川スニーカー文庫
2000年4月1日第1刷
定価381円

 「∀ガンダム 3.百年の恋」の続刊。
 ディアナ・ソレルと入れ替わったキエルが発した和睦の宣言は、ムーンレイスによる農作物の一方的な収奪という形であらわれる。キエルに反発するディアナカウンターにより発掘された原子爆弾が使用され、叛乱を受けてキエルは逃亡する。キエルと入れ替わっていたディアナも、発掘された宇宙船で月に帰還しようとしていた。逃亡のさなか、海辺でディアナとキエルは再会し、2人はお互いがディアナでありキエルであるという宣言し、まわりの者たちは戸惑う。月に到着したディアナ、キエル、そしてロランは、ムーンレイスとの共闘を目論むグエンとともに月の都市に入る。しかし、彼らは歓迎されざる客であった。月にいる彼らの本当の敵とは……。
 アニメを見ていない私は、なまじストーリーを知らない分だけ、面白く読んでいる。
 特に、原爆を掘り出し、その威力も知らずに使用してしまうくだりなど、伝承を真実と認めたがらない人々の心理をうまく描いた納得できる展開である。
 ただ、ディアナとキエルがいかにそっくりでお互いに情報を伝えあっているからといっても、2人が同一人物としてふるまい、周囲がその区別をつけられないというのは、ちょっと無理があるのでは。アニメなら可能なのかもしれないが、小説にすると苦しい。たとえキエルがディアナのクローンであったとしても、成長していく過程での経験などから身についた物腰や癖などは違うはず。親しい者にそれがわからないはずがない。キエルの妹、ソシエにも2人の区別がつかないというのはどうにも不自然に感じた。

(2000年4月5日読了)


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