読書感想文


幻妖草子西遊記〜天変篇〜
七尾あきら著
角川スニーカー文庫
2000年4月1日第1刷
定価533円

 PS版ゲームソフトのノベライゼーションで、幻妖草子西遊記〜地怪篇〜に続く完結編。
 三蔵一行はいよいよ天竺大雷音寺に。しかし、そこで待ち受けているはずの観音菩薩はおらず、破壊神アスラとその周辺を固める悪鬼たちが待ちかまえていた。三蔵は錫杖に宿した神将の力を借り、悟空らと悪鬼衆を一人ずつ倒す。単純に倒していくのではなく、彼らがなぜ悪鬼になったのかという原因を、読心術により知り、そこに流れる現世への怒りに共感したりする。
 破壊神アスラに対峙したときも「世界を滅ぼしたあと、あなた自身はどうなるのか」という根源的な問いかけをしたりする。これはこういった対決ものには珍しい。アクション的な面白さよりもこのような問いかけが主体となるところがRPGのノヴェライゼーションらしさ、かもしれない。ボスキャラクターが出てくるまでにサブキャラクターが妨害してくるがやられてしまう、というパターンで、なぜボスキャラは部下を助けないか疑問に思うことはままあるのだが、本書ではそれにもうまく理由づけをしている。これはゲームシナリオにあったことなのか、作者が小説化する際に加味したものなのか、それがわからないのは残念だけれど、これが作者の独創であったとしたら、一段と成長したと拍手を送りたくなる。
 次は作者のオリジナル作品を読みたい。

(2000年4月8日読了)


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