読書感想文


姫神さまに願いを~夢路の剣~
藤原眞莉著
集英社コバルト文庫
2000年4月10日第1刷
定価514円

 「姫神さまに願いを~鏡悟りの森~に続くシリーズ第6弾。
 今回は舞台を平安末期から鎌倉初期にとった番外編。神として修行中のテンが、源頼朝と北条政子夫妻のもとに現れ、鎌倉幕府創設に関わっていく。実質的な主人公は源義経で、狂言廻しであるところのテンが、義経に呪を施し滅ぼす役回りを果たしている。義経と頼朝、そしてテンの緊張感のある人間関係などがよく描けている。
 本書に登場する北条政子は、読者と等身大の女性という役どころになっており、一般的な尼将軍の政子像とはかなり違ったイメージとなっているのが興味深い。また、武蔵坊弁慶が不老の存在としてある使命を帯びて登場している。ここでの弁慶も新しい解釈がなされていて見るべきものがあるといえる。
 だからこそ、これまで再々指摘してきたコミカルなタッチの部分と物語のシリアスな展開のギャップがより一層目立つように思う。決して無理をしてコミカルに描いているような感じではないのだけれど。まあここまできたらシリーズに統一感を与える上でもコミカルな部分をなくすのも難しいところではある。
 注目の時代伝奇シリーズにまた面白い一冊が加わった、というべきだろう。

(2000年4月26日読了)


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