「荒野に獣 慟哭す 4
鬼獣の章」に続く、シリーズ完結編。
いやはや、こんなに早く完結するとは思わなかった。これまでの刊行ペースからいくとあと3年くらい待たなければならないと思っていただけに、嬉しいことだ。
本巻では薬師丸法山が独覚菌に感染し、御門周平を上回る力を得る。一方、御門は獣化兵となる前の竹島丈二としての記憶を取り戻し、この物語の発端の謎が明らかになる。
獣化兵と神話との関連を明らかにし、私欲のために人の命を蹂躙する男を倒すことで戦いに一応の決着をつけ、ラストシーンも余韻を残すような形で締めくくる。
作者の「環境」に対する思いをこれほどストレートに打ち出した作品は珍しい。主人公は人間を超える存在ではあるが、ただ一人だけでは巨悪を倒すことができないというあたりに、作者の心情があらわれているように感じられた。大きなテーマに安易な解決はできない。それは実際に環境保護活動に参加したことのある作者の実感でもあろうし、説得力がある。
社会問題と神話という結びつきにくいテーマをアクション小説として融合させた作者の力業を評価したい。
(2000年5月25日読了)