「せがれの凋落 お言葉ですが…三」の続刊。
「週刊文春」にて好評連載中の「言葉」に対する小言エッセイをまとめたもの。四巻目に達してますます快調である。
本巻で気に入った話題をいくつか挙げる。
広辞苑に新語が収録されたからと大騒ぎする新聞に対して「広辞苑」よりも歴史が古く確かな辞書があるのになぜ人は広辞苑をありがたがるかと考察する「広辞苑神話」。
「パニクる」という新語ができた経緯を、その言葉を最初に発した人からのお便りをひいて紹介し、こういう造語には歴史的にみて標準的な作られ方をしていると喝破する「新語誕生の現場」。
戦時中に英語が禁止されていたという風説を、きっぱりと事実をもって否定する「アドミラル ヤマモト」。
「すばる」という星の名の語源を探る「スバルはさざめく」。
「聖人君子」という言葉は正しくは「正人君子」と書くべきだと主張し、その言葉の来歴を中国の歴史からさかのぼって考証する「セイジンクンシ大論戦」。
なぜ「アキツ」が「トンボ」と呼ばれるようになったかを推理する「トンボの由来」。
いずれも著者の言葉に対する思いが決してまなじりを決することなく飄々と書かれていて楽しく、そしてためになる。
本シリーズを読んでいつも自分がいかに言葉に対して無自覚であるかと恥じいるのだが、今回もまた何度もうならされてしまった。
(2000年6月13日読了)