読書感想文


姫神さまに願いを〜巡恋夏城〜
藤原眞莉著
集英社コバルト文庫
2000年6月10日第1刷
定価438円

 「姫神さまに願いを〜夢路の剣 〜に続くシリーズ第7弾。
 カイとテンの二人は、越後路へ。ここで若き城主、長尾景虎に出会う。景虎に前世での因縁があると見たテンは少年の姿で彼に接近する。そのテンに求婚する景虎。嫉妬からテンと気まずい雰囲気になるカイ。そんな中で、景虎の兄、晴景は優秀な弟をうとんじ、合戦をしかけようとしていた……。
 本巻ではカイとテンが積極的に歴史の分岐点に関わるということはなく、どちらかというと傍観者的な立場になる。この二人の関係に多少の変化は起きるが、本巻を読んだ限りではそれが長尾景虎と関わる必然性が薄いように感じた。もっとも、ラスト近くあたりで景虎と二人の再会を示唆するような記述があるので、本巻全体が今後への伏線であるとも考えられる。
 実際、文中にこれまで外伝的に刊行されていた平安時代編に関係するような記述が見え、作者は全巻完結の暁に、かなり大きなスケールの歴史小説にするつもりであるように思われる。そういったいわばつなぎのエピソードであれば、短編にして続きの長編と組み合わせてみてもよかったのではないだろうか。

(2000年6月16日読了)


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