読書感想文


ダブルブリッド II
中村恵里加著
メディアワークス電撃文庫
2000年5月25日第1刷
定価590円

 「ダブルブリッド」の続刊。
 〈アヤカシ〉と人間の混血である片倉優樹は、オーストリアから日本に侵入してきた〈アヤカシ〉の一人である吸血鬼、フレッドに日本での〈アヤカシ〉の登録を受けさせようとする。それを拒んだフレッドは、優樹と勝負をして自分が負けたら登録するが、かったら優樹の血を吸わせよという条件を出す。かくして優樹とフレッドの彼らの間だけに通じるルールに基づいた対決が始まる。
 本巻では、少しずつ優樹の過去が明かされる他、〈アヤカシ〉同士の連帯感や〈アヤカシ〉ト人間の間にある埋めがたい感情の違いなどが活写される。ここらあたりはシリーズ化した事による利点であろう。いちいち新たに設定を説明しなくていいからだ。第1作で描けなかった登場人物の背景などにも触れることができ、人物造形に深みもでる。
 本作でもいくつか伏線を張っておいて次作につなぐという部分が多い。本作が人気シリーズとなって続刊も長く続くということであれば、こういう書き方もかまわないと思うが、新人だけにどれだけシリーズを続けさせてもらえるかはわからない。それだけに、第1巻で張った伏線は本巻でなるべく解決してほしいところである。
 吸血鬼に対する解釈や、人間の持つ矛盾など、独自の視点で描いており、かなりの実力を感じさせる。それだけにあまりこのシリーズにかかりきりにならずに、単発のものも書いて実力を磨いてほしいものである。

(2000年7月1日読了)


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